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京劇の楽器

 

京劇の楽器類は大きく分けると、弦楽器、管楽器、打楽器、その他の4 種類に分けられる。

 

一.弦楽器類

 

京胡1.京胡(ジンフー jinghu)

京胡は今から二百年前、京劇と一緒に地方から北京にやってきた楽器であり、京劇で最も重要な地位をしめる擦弦楽器(さつげんがっき)である。弦楽器でありながら笛のように途切れない音を出すことができる。また共鳴胴に膜(蛇の皮)が張ってあるため、バイオリンよりもさらにいっそう、人間の声に近い声を出すことができる。

京胡はもともと一種類であったが、現在では、やや小型の「西皮用」タイプと、やや大きめの「二黄用」タイプ、およびその中間型の汎用(はんよう)タイプの3種類がある。

昔は、京劇の一流の名優は、自分だけの専属の琴師(チンシー)、つまり京胡弾きをかかえていた。京劇のうたは、役者と琴師が作ってきたといっても過言ではない。

 

月琴2.月琴(ユエチン yueqin)

京胡の次に重要な地位をしめる、撥弦楽器(はつげんがっき)である。月琴は京劇や京胡よりも古い歴史を持つ楽器で、京劇以外の伝統音楽でも広く使われている。

京胡および歌唱者(俳優)の声が飴のように伸びるのに対して、月琴の音はピアノのようにポツポツきれる。

月琴は基本的に一種類であるが、張る弦の数(糸巻きの数)、フレットの位置(半音までびっしりはめこむか、全音階だけにするか)、胴体内部に金属片やバネなどの共鳴材を入れるか否か、など、演奏者のコンセプトによって形態をいろいろ変えることができる。

 

京二胡3.京二胡(ジンアルフー jingerhu)

京胡・月琴に次いで重要な弦楽器である。京胡より一オクターブ低い、バイオリンのような音色である。ただし京胡ほどの音量は出ない。

この楽器の歴史はあさく、名優・梅蘭芳(メイランファン)の京劇改革期のとき、それまで高音域に偏していた京劇音楽を是正するため、導入された楽器である。

 

三弦4.三弦(サンシエン sanxian)

沖縄の三線(さんしん)、日本の三味線(しゃみせん)のルーツにあたる楽器である。

月琴より音を間引いて弾けるので、ここぞと思うところでリズムを強調することができる。また三弦が合奏に加わることで、音に暖かみが加わる。

 

中阮5.中阮(チョンルアン zhongruan)

西洋のギターのような、よく響く澄んだ低音を発す。中阮の原形である「阮咸」は非常に古い楽器である。中阮は中国各地の伝統音楽で広く使われている楽器であるが、京劇には比較的新しく採用された楽器である。

京劇音楽の弱点である低音域を補う。また、西洋音楽の「ベース」同様の効果をもたらす。

 

大阮6.大阮(ダールアン daruan)

中阮を更に大型化した、より低音の撥弦楽器である。

秦琴(チンチン Qinqin)

もともと京劇以外の民間伝統音楽で使用されていた楽器である。京劇音楽でもそれほど普及している訳ではなく、一部の劇団の楽隊で人数に余裕のあるときに採用されるくらいである。

 

二.管楽器類

 

笛子1.笛子(ディーズ dizi)

竹製の中国式フルート。劇音楽用のものを特に「曲笛(チュイディ qudi)」とも言う。本来、昆曲など京劇以外の地方劇で使われる楽器であるが、京劇でも演目によっては昆曲の旋律を使う場合などに使用される。

 

唢吶2.唢吶(スオナー suona)

唢吶は、左半分は口へん、右半分は鎖という字の右側、を示す合成文字である。

京劇では、曲笛同様、昆曲の旋律を吹くときに使われる。また、合戦の場面、雁や馬の鳴き声などの描写に効果音的に使用される。

因みに中国の日常生活では、伝統的な結婚式や葬式のときにこのスオナーが大活躍している。

 

3.海笛子(ハイディーズ haidizi)

小型のラッパ。華やかなチャルメラなどにくらべると、京劇音楽ではあまり目立たない存在である。

 

笙4.笙(シェン sheng)

中国の楽器にしては珍しく、単旋律演奏よりも和音演奏(ただし西洋の和音とは音の組み合わせが違う)を重視した作りになっている。京劇では、昆曲の旋律を演奏するときに使用される。

 

三.打楽器類

 

京劇音楽は「文場」と「武場」に分けられる。上述の旋律系楽器による演奏が「文場」と呼ばれるのに対して、以下の打楽器群による打撃音楽は「武場」と呼ばれる。

京劇における打楽器は非常に重要で、風の音、水の音はもとより、本来耳で聞くことのできない暗闇のようなものすら打楽器で表現される(昔は照明施設など無かったので、闇も音で表現した)。

打楽器の中で最も重要なのは、檀板(タンバン tanban)、単皮鼓(ダンピーグー danpigu)の二つで、併せて「鼓板」と呼ばる。これらは、西洋音楽の指揮者にあたる「司鼓」(「鼓師」とも)が一人で演奏する。

次に重要なのは金属製の打楽器群で、大鑼(ダールオ daluo) 大きなドラ、鐃[金發](ナオボー naobo) にょうばち、小鑼(シャオルオ xiaoluo) 小さなドラなど、楽隊員がひとり一種類ずつ分担して持ち、司鼓にあわせて演奏する。

打楽器の演奏にも伝統的な厳密な型が存在する。京劇で常用されるリズムパターンは約60種類で、その1種ずつに「急急風」「四撃頭」「紐糸」「水底魚」など名前がつけられている。これらは、主要登場人物の登場、立ち回りの場面など、場面によって使用される型がだいたい決まっている。

その他、堂鼓(タングー tanggu)も、曲目によって演奏に加えられる。

 

四.そのほか 西洋楽器・電子楽器など

 

現代京劇では、中国在来の伝統楽器群と一緒に西洋の管弦楽を演奏に加えるようになった。

また最近は、伝統演目の場合でも、効果音としてシンセサイザーや電子キーボードを楽隊に加える場合がある。

旧来の伝統楽器と電子機器を組み合わせることも、今では普通になっている。例えば、大阮など低音弦楽器にPU(ピックアップ)を付けるのは、普通に行われている。


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